バラエティーと学問のConflict

月曜日の夜、専門分野の評論家が最新の情報をお届けするという、とあるバラエティー番組があります。その中で、よくある「浮気遺伝子」の話がでてきました。ネズミの「一夫一妻」が、遺伝子の突然変異で「一夫多妻」になる、という話から始まったのですが、ゲノムインプリンティングの話まで浮気遺伝子として放送されていたのには、びっくりしました。
ゲノムインプリンティングというのは、ある遺伝子が、父方からくる場合と母方からくる場合で発現が異なることです。その中の一例の、胎児への栄養供給の話が、浮気遺伝子とされていたのです。
胎児の成長を促進する遺伝子のいくつかは、父方から遺伝した場合は発現し、母方から遺伝した場合は発現を抑制されています。父親としては、胎児がたくさん栄養を吸収して成長すると、胎児の生存率が高くなるので、遺伝子が発現した方が、自分の適応度があがります。しかし母親としては、胎児に栄養をたくさん吸収されてしまうと、将来の弟の生存率が下がったり自分自身の生存率が下がるので、遺伝子の発現を抑制した方が、自分の適応度があがります。いわゆるConflictです。
しかし、この話を「他の男の子供が欲しいという女の浮気遺伝子だ」と言っていたのです。その論点は間違っていますし、この話をしていたのが生物学の評論家ではないのに、放送されてしまったのです。その他にも、色々とひっかかる話がたくさんありました。
バラエティー番組だから、と割り切って観ていれば問題ないのでしょうけれども、視聴者の中には本気にする人も多いのではないでしょうか?